【北欧神話26】神聖なる光の番人ヘイムダルと終焉の角笛ギャラルホルンの物語
その伝承の云う所
ヒミンビョルグと呼ばれる地に
光の神ヘイムダルは神聖なる場所を守る
神々の番人は 安息の高楼で
美酒を酌んでは愉しんだ
『グリームニルの歌』
“白いアース”。
それが彼の異名。
清らかで美しく、優雅で、偉大なる神。
アース神族の中で最も麗しい
白く輝く光の神ヘイムダルは
終末を告げる角笛片手に
虹の橋を守り続ける。
神々の国の門番は
ただ一人、寝ずの見張りを怠らない。
ついには橋が崩落し、
角笛を吹き鳴らして
世界に終末の音を轟かせる、その時まで。
こんばんは。えむちゃんです。
今宵は、神聖なる光の番人
ヘイムダルの物語をお話ししましょう。
白いアース
九人の波の乙女のもと、
白い砂浜に生まれ
強く美しく育ったヘイムダルは
「白いアース」の異名の通り、
まばゆい光を放っていました。
白い鎧に身を包み、
黄金の歯を輝かせ
金色の立髪をなびかせる駿馬・
グルトップに跨って
3色に光る虹の橋を渡ります。
その麗しい姿と、明るく無垢な性格に
ヘイムダルはアースのすべての神々に
愛されていました。
偉大なる全智の神
偉大なるヘイムダル。
“世界の柱”を意味するその名に相応しく、
古くエッダの詩篇の中には
このように綴られます。
その大きなるも小さきも
神聖なる皆人は
神ヘイムダルの子
古来、人々が彼を
特別神聖な神として崇拝する所以とは、
一説に“人の始祖”ともされるためです。
虹の橋の番人
かつて神々によって
虹の橋が作られた時、
ヘイムダルは
神々の世界を守る番人として抜擢され、
彼は快く引き受けました。
虹の橋ビフレストは、安寧の要。
絶対の信頼が置けぬ限り
番人は任せられません。
岩をも砕く剣を腰に差し、
背中を濡らしながら
ヘイムダルは昼も夜も、
たった一人で橋を見張ります。
その目は百マイル先の
いかなる小さなものも見逃さず、
その耳は丘の草の生える音、
羊の毛の伸びる音さえも聞き逃さない。
眠る時間はほとんどなく、
空を飛ぶ鳥たちほどにもありません。
それでもヘイムダルは
頑丈ゆえに平気でした。
橋のたもとに
ヒミンビョルグの館を建て、
見張りの傍、酒を飲み、
毎日楽しく過ごしていました。
終末を告げる角笛ギャラルホルン
日ごと神々が虹の橋を通るたび
ヘイムダルはギャラルホルンの角笛で
美しく柔らかな音色を奏でます。
永く、穏やかな調ばかりが
神々を癒す日々が続きました。
しかし、そんな平穏も
ついには終わりが来るのです。
世界の最終戦争。
神を害する軍勢は橋を目掛けて殺到する。
その時、彼は角笛を吹き鳴らし
警告の音を轟かせる。
ギャラルホルンの音が告げるは
ラグナロクの到来。
神々の恐れてやまない
運命の巫女に予言された
世界の終末の日。
ヘイムダルは息の続く限り、
笛を鳴らし続ける。
今夜のお話はいかがでしたか?
おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。
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今日も一日、お疲れさまでした。
それでは、良い夢を。