【北欧神話14】夜と昼、月と太陽の物語

太陽は知らない
自分の館がどこにあるのかを

星たちは知らない
自分の居場所がどこにあるのかを

月は知らない
自分がどのような力を秘めているのかを

『巫女の予言』

天を駆ける二頭の馬が運ぶのは
夜と昼を司る二人の親子。

大急ぎで月と太陽を運ぶのは
見目麗しい二人の兄妹。

そうして今日も1日が過ぎてゆく。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、北欧神話の世界における
夜と昼、月と太陽の物語
をお話ししましょう。

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夜の女神、昼の神

1日は 夜からはじまる。

夜の女神 ノート

昼の神 ダグ

二人は最高神オーディンの命により
与えられた馬車に乗って
天空を回り続ける。

女神ノートは 黒髪に暗い成り
その姿はまさしく夜そのものであった。

ノートの父は
ヨーツンヘイムに住む巨人ナルヴィ

彼は悪戯好きの悪神ロキの息子の一人とされる。

ノートは 3度結婚し、3度子を産んだ。

最後の夫は、
夜明けの光を意味する神デリング

彼との間にもうけた息子こそ
昼を司る神ダグである。

ダグは父親に似て
生まれながらに大変明るく美しかった。

夜と昼を運ぶ馬

夜と昼とを乗せて走るは
名高い2頭の馬。

夜の女神を運ぶ馬は、
“霜のたてがみ”。

その名を、フリームファクシ

走る轡(くつわ)から滴らせる泡が
大地を湿らせ、谷間は露を帯びる。

昼の神を運ぶ馬は、
“光のたてがみ”。

その名を、スキンファクシ

戦場において最上のその馬は
美しく輝くたてがみをふるわせ、
天地を照らす。

先を走るはフリームファクシ。

次いでスキンファクシが後を追う。

2頭が12時間おきに
大地の上空を駆けることで
日々が過ぎ、季節が巡る。

月と太陽

天に登る月と太陽。

かつて彼らはまだ己を知らず
不安定であった。

ゆえに神々は彼らに運行を定め、
月の満ち欠けや
1日のうちの朝、昼、午後、夕を取り決めた。

これにより時間や日数、1年の計算が
できるようになった。

月と太陽の運行を導くは
二人の美しい兄妹神。

マーニのその名は、“月”。

月の満ち欠けと運行を受命する。

ソールのその名は、“太陽”。

太陽をひく馬車の御者を受命する。

ソールが御する二頭の馬は
“早起き” アールヴァグと、
“快速”で “賢い” アルスヴィズ

二頭は肩の下にふいごを装着し
風を送って熱くなった体を冷やす。

それでも彼らは大急ぎで
馬を走らせなければならない。

なぜなら、月と太陽は
常に恐ろしい狼に追いかけられているからである。

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月と太陽を喰らう狼

人間の世界ミズガルズ
巨人の世界ヨーツンヘイムの境にある
鉄の森、イアールンヴィズ

森に住まうは、
魔女と年老いた女巨人、
そして、彼女の産んだ獰猛な狼たち。

彼らこそ、月と太陽を喰らおうと目論む狼である。

月を狙うは、
ハティ・フローズヴィトニストン

太陽を狙うは、スケル

最も凶悪なマーナガルムは、
月も太陽も狙っている。

その腹は死すべき人間たちで満たされ、
獲物が流した赤い血潮が空を染め上げ
夕焼けや朝焼けを起こす。

このように、狼に追われる月と太陽を
運びつづけるという如何にも大変な仕事を
兄妹神は、なにも進んで引き受けたわけではない。

かつて二人が生まれたとき、
父親であるムンディルファリという男が
子供たちのあまりの美しさに喜んで
それぞれに月と太陽の名を与えた。

ところが、これを大変な思い上がりだと
怒った神々が、罰として
月と太陽の運行をするようにと
子供たちに命じたのであった。

こうして今では、
二人がどうにかこうにか狼たちを振り切り
日々、何事もなく月と太陽が天に昇る。

しかし、そんな日々も
世界の終焉とともに終わりを迎える。

終末の戦いで、ついに月と太陽は
狼に飲み込まれてしまう。

その後の世界がどうなったかは、
また別のおはなし。

今夜のお話はいかがでしたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

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