【北欧神話16】詩の神ブラギ、ある美しい一日の物語

詩の神ブラギのその名を
我々は如何にして呼ぼう

女神イズンの夫にして
この世の最初の詩人

長い髭を蓄えた
顎髭の神

そして オーディンの息子と呼ぼう

『詩語法』

知恵と雄弁。
歌と音楽。

詩の神ブラギは
ルーン文字を舌に刻み、
黄金の竪琴を奏でながら
耽美なる歌を紡ぎ出す。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、詩と雄弁の神ブラギの
ある美しい一日の物語
をお話ししましょう。

スポンサーリンク

詩の蜜酒を巡る物語

美しき乙女グンロズ

かつて、最高神オーディンが
飲めば誰でも詩人や学者になれるという
不思議な『詩の蜜酒』を、
巨人の洞穴から盗んだときのこと。

貴重なその酒を守っていた
美しき善良な乙女・
グンロズを口説き落とし、
詩の蜜酒を奪い取ったオーディン。

騙されてしまったグンロズは
かわいそうに、たった一人で
子供を産むこととなりました。

その子供というのが、
どうやら今回の物語の主人公、
ブラギであるようなのです。

ブラギはそれゆえ詩の才能に溢れ、
父オーディンのように
知恵に富んでいるのでしょう。

詩の神ブラギの誕生

これは、ブラギが初めて光に満ちた
ある美しい一日の物語です。

満月の輝く夜。

ブラギは、暗い暗い
鍾乳洞の中で生まれました。

そうして洞穴から出ないまま
すくすくと育ちました。

ブラギの誕生の噂は、やがて
地下に広がる闇の妖精の世界
スヴァルトアールヴヘイムに住む
小人族の耳にも届きました。

喜ばしい知らせに
小人たちは躍り上がって
詩の神の生誕を祝福し、
お祝いに、黄金の竪琴を
贈り与えました。

きっとこれからこの世界は
希望に満ち溢れ、
もっと楽しく、
もっと面白く、
もっと素敵になるだろう。

それはまるで
暗く冷たいこの地下世界に
一筋のまばゆい光が差しこんだようでした。

地上の世界

やがて小人たちは
明るい光に照らされた地上の世界へと
ブラギを連れ出してやることにしました。

用意された一隻の舟に乗り、
ブラギは生まれて初めて
洞穴を出ます。

小人たちの優しさとは裏腹に
ブラギはまるでふてくされるように
舟の中に横たわっていました。

舟は地下の暗闇を進み
ようやく地上に辿り着きました。

目の前に広がる
日の光に包まれた、眩しい世界。

その光が水面に反射して
きらきらと輝いています。

初めて見る光景に
ブラギは思わず息を呑みました。

そして寝ていた体を起こし、
黄金の竪琴を持ち上げると
おもむろに、それはそれは美しい声で
歌を歌い始めました。

ブラギの歌う『生命の歌』は
世界中に響き渡り、
神々の住む天空の世界アースガルズから
果ては最下層の冥界ヘルヘイムにまで
届くほどでした。

スポンサーリンク

イズンとの出会い

歌い奏でるブラギを乗せ
舟は静かに波間を漂いました。

やがて岸に漂着すると
ブラギは舟を降り、
樹々の生い茂る森の中へと
歩いて行きました。

竪琴を奏で歌い歩くブラギの後には
たちまち花が咲き乱れ、
樹々も大いに喜んで蕾を開かせました。

ほどなくして、ブラギはふと
歩く足を止めます。

ブラギの見つめるその先には
なんとも美しい女神が一人佇んでいたのです。

目は空のように青く澄み渡り、
穏やかな表情はとても優しげで
木漏れ日に身を包むその姿は
まるで森の精霊のようでした。

彼女の名は、イズン

二人は目と目が合う瞬間
恋に落ちました。

そして、ともに森を出て
神々の世界アースガルズへ向かいました。

神々は二人を祝福し、
アースガルズに住むことを
快く受け入れました。

こうしてブラギは
天界の最高の詩人となり、
神々を讃えて日々、歌い奏でたのでした。

詩の神ブラギと黄金の林檎の管理者イズン

今夜のお話はいかがでしたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

この記事をSNSでシェア!
スポンサーリンク

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

error: Content is protected !!