【北欧神話18】不老不死の源!“黄金の林檎”を巡る大事件の物語

エーギル またはフレール
彼はフレーセイの島に住む
呪術に秀でし男

アースガルズを旅すれば
神々に歓迎され 

また 多くのことは惑わされ

光り輝く刀剣が広間を照らす中
盾の覆う壮麗な壁に囲まれ
男は強い酒に飲まれた

やがて詩の神ブラギは
エーギルに語りだす

『詩語法』

とこしえの若さを叶える
黄金の林檎

神々の永遠の命は
その林檎により授けられる。

そんな要が盗まれては
いかな神々もうろたえる。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、不老不死の源“黄金の林檎”を巡る
天界の大事件の物語
をお話ししましょう。

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鷲の取引

かつて最高神オーディン
いたずら好きの神ロキ
優柔不断な神ヘーニルを連れて
旅に出かけた時のこと。

腹をすかせた三人は
谷間に見つけた牛を捕まえ
食べることにしました。

さっそく火を焚き、牛をくべ、
頃合いだろうと見てみると
まだまだ肉は赤いままでした。

今度は長く火にくべて
もう十分だろうと見てみると
まだまだ肉は赤いままでした。

何かがおかしい。

まるで肉が焼けないように
誰かが魔法をかけているようだ。

すると、三人の頭上から
なにやら声がしました。

「その通り。
肉が焼けないのはこの私のせいだよ。」

見上げると、樫の木に
とても大きな鷲がとまっていました。

「その肉を私の気の済むまで
譲ってくれるというのなら、
すぐにでも肉を焼けるようにしてやろう。」

三人は仕方なく、
鷲にも肉を分けてやることにしました。

鷲は喜んで地上に舞い降りると、
その大きな翼で火を煽り、
約束通り、肉はすぐに焼き上がったのでした。

ところが瞬間、
鷲は牛の2つの腿と両肩を掴むと
とたんに肉をかっ攫おうとしたのです。

怒ったロキは大きな棒を掴み上げ、
鷲めがけて力いっぱい叩きました。

すると不思議なことに
棒は鷲のからだにぴたりとくっついて、
離れられなくなってしまったロキは
鷲とともに天空高く舞い上がりました。

地上に返してほしいと懇願するロキに
鷲はある取引を持ちかけるのです。

イズンの拉致

「神々の国アースガルズにて
黄金の林檎を守る
美しき青春の女神イズンを誘い出せ。

林檎と共に
私のもとまで連れてくると誓うんだ。

そうすれば、
お前を地上へ返してやろう。」

こうしてロキは、鷲の言うままに
イズンを攫うこととなってしまいました。

イズンの夫ブラギの居ぬ間を狙って
ロキが声をかけます。

「やあ、あなたの黄金の林檎は美しい。

ですが、私は
それに劣らぬ林檎の在処を知っている。

きっとあなたも喜ぶでしょう。

どうです、
一緒に見比べに行ってはみませんか?」

イズンは目を輝かせて
黄金の林檎を片手に、
ロキについていきました。

そしてアースガルズの郊外に
一人残されたイズンを、
大きな鷲がさらってしまうのでした。

鷲の正体は、巨人スィアチ

攫われたイズンは、
巨人の世界ヨーツンヘイムの
山間にあるスィアチの館スリュムヘイム
囚われてしまいました。

ロキへの尋問

さて、黄金の林檎を失った天界は
大騒ぎです。

神々は日毎に年老いて
若さを保っていられなくなりました。

やがて、ロキがイズンを連れ出した
ということが分かると、
最高神オーディンの下に連れてこられました。

怒るオーディンに、ロキは震え上がって
必ずやイズンと林檎を取り戻すと誓うと、
女神フレイヤから鷹の羽衣を借りて
鷹の姿となり、慌ててスリュムヘイムへ飛んで行きました。

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黄金の林檎の奪還

スィアチの館につくなり、
ロキは一人悲しみに暮れるイズンを見つけ出しました。

そうして、彼女を
魔法で小さな木の実に変えてしまうと、
巨人が海へ漁に出ている隙に、
ロキはイズンを外へと連れ出し、
しっかりと鷹の爪で掴んだまま、
神々の世界アースガルズへ急いで飛び立ちました。

ところが、それに気づいたスィアチは
すぐさま鷲の姿となってロキの後を追い、
とうとうアースガルズの門前まで
追いついてきたのです。

2羽を見つけた神々が急いで火を起こすと
鷹のロキは砦の中へ飛び込み、
鷲のスィアチは火の中へ飛び込んで
立派な羽根に火が燃え移ってしまいました。

そして空から落下したスィアチは
門前で神々に殺されてしまうのです。

こうして、黄金の林檎を取り戻した神々は
ふたたび手に入れた永遠の若さと
美しさを喜び、
日々を楽しく暮らしたのでした。

その後、親の敵を討たんとして
神々の世界に一人の巨人の娘がやってくるのですが、
それはまた別のお話。

今夜のお話はいかがでしたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

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