【北欧神話24】オッタルの先祖数え競争の物語

愚かなる人間オッタルよ
これがお前の一族のすべて

あらゆることを語っているが
さらなることを語らねばならぬ

聞けばお前のためになろう
もっと知りたいか

『ヒュンドラの歌』

古い記憶を手繰り寄せ、
男の先祖とその歴史は
遂に紐解かれる。

すべての鍵は巫女の守る
記憶の麦酒」の、その中に。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、オッタルの先祖数え競争の物語をお話ししましょう。

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土地をめぐる対立

ここは世界樹ユグドラシルの中央に広がる
海に囲まれた人間の世界、ミズガルズ

なにやら二人の若い男が
言い争いをしています。

一人の男の名はオッタル

色欲の女神フレイヤ
愛人として特別気に入られていた男。

もう一人の名はアンガンチュール

二人はオッタルの父が遺した
土地の所有権をめぐって対立していたのです。

言い争いもとうとう埒が明かないので、
村人たちは正式に競争をしてはどうかと提案しました。

その競争の内容とは、
お互いに先祖の名前を挙げて
より多く言えた方が勝利するというもの。

この“先祖数え競争”には
遺産の土地と貴重な黄金が賭けられ、
数日後の勝負に向け
二人は準備に取り掛かりました。

女神の加護

必ずや勝負に勝ちたいオッタルは
懸命に神に祈りを捧げます。

積み上げた石を牛の血で赤く染め、
ガラスのように輝く祭壇を作り、
愛する女神フレイヤと、アースの神々に
すがるように祈りました。

祈りを受けた天界の女神フレイヤは、
愛するオッタルのために・・・

と、もう一つ。

勝負の報酬、
彼女の大好きな黄金のために、
一肌脱ぐことにしました。

フレイヤは早速オッタルを呼び出すと、
彼を猪の姿に変えて
とある場所へと急ぎました。

巫女ヒュンドラ

暗い闇夜の岩穴に、響く一声。

「起きなさい、巫女ヒュンドラ。
起きて私の願いを聞き入れなさい」

「こんな夜中に何事か」

暗闇の奥から、一人の女巨人が
渋い顔をして現れました。

「ここにいるオッタルのため
彼の先祖の話をしてやってほしいのです」

「知るというのはためになる。

愚かなる人間オッタルよ、
お前の祖先を知りたいか。」

そうしてヒュンドラは、
彼の一族の歴史を
流れるように語り出しました。

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記憶の麦酒

お前の生まれたインステインの上には
アールヴ、その上にはウールヴ、
セーヴァリ、スヴァンル・・・

お前の母は
首飾りの美しいフレーディース

その父はフロージ、その母はフリアウト・・・

ヒュンドラの記憶はたいへん鮮明で
その分話も、長い長い、あまりにも長いので、

彼女がどんなことを語ったか
ここではお話しできないほど。

こういうわけで、オッタルも当然
一度聞いただけでは
とても覚えられませんでした。

そこで女神フレイヤは言いました。

「ヒュンドラ、今語ったすべてのことを
“記憶の麦酒”に込めて、

オッタルに与えてやりなさい」

「とんでもない。
あれは私の大切な霊薬だ。

人の知りえぬ古い記憶を
自然に反して教えてやったのだ。
これで十分ではないか。

さあ、もう帰ってくれ。私は眠いんだ」

すると女神は怒りだし、

「ならばお前を逃げ出すことの叶わない
激しい業火で囲い込む。」

と言って、脅しました。

そうして魔法で
火を放とうとするものですから、

ヒュンドラも毒を持ち出して
記憶の麦酒に混ぜたものを
オッタルに渡しました。

しかし、フレイヤは神の加護を与え
麦酒の呪いは効果を失い、

こうしてオッタルは
ついに一族すべての名前を
挙げられるようになったのでした。

明くる三日目の朝、
彼が先祖数えの競争に
勝利したことは言わずもがな。

オッタルは父の遺した土地を受け継ぎ、
フレイヤは愛する黄金を手に入れ、
アンガンチュールは悔しさに
歯を軋ませたのでした。

今夜のお話はいかがでしたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

併せて、えむちゃんの朗読ちゃんねるも
ぜひ訪れてみてくださいね!

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

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