【北欧神話25】虹の橋ビフレストと神々の法廷の物語 / おやすみ前の神話シリーズ
ケルムト、エルムト
そして二つのケルラウグの川
雷神トールは日ごと裁きを下さんと
世界樹ユグドラシルのふもと
これらの川を渡りゆく
聖なる川の沸き立つは
アースの神の橋が
紅く燃え盛るゆえ
『グリームニルの歌』
空に美しく架かる虹。
それは神々の住む天界へと通ずる
紅き炎に包まれた
虹の橋、ビフレスト。
神々は日々橋の上を行き交い
ウルズの泉のほとりにある
神々の法廷へと赴く。
橋を包む赤く燃える炎は
アースの神々は通せども
巨人の侵入は一歩たりとも許さない。
こんばんは。えむちゃんです。
今宵は、地上と天界とを繋ぐ虹の橋
ビフレストの物語をお話ししましょう。
神々の法廷
世界樹ユグドラシルの3本の根。
そのうち一つは、
神々の世界アースガルズに根ざし
根本には、ウルズの泉が湧く。
大蛇や牡鹿に傷付けられた
ユグドラシルは
運命の三女神が
ウルズの泉の水を汲んでは
絶えず癒やしてやることで保たれている。
そんなウルズの泉は
特別神聖な場所とされ、
ゆえにアースの神々は
その場所に法廷を置くことにしました。
神々は日毎に法廷に集まっては
様々のことを話し合います。
善い者には
いかなる報酬を与えるか?
邪な者には
いかなる罰を与えるか?
いろいろなことが起きる世界。
日々の議題は尽きません。
虹の橋ビフレスト
神々が法廷へ赴く際に通るのは
大地と天界とを繋ぐ虹の橋、ビフレスト。
その名を、“揺れてぐらつく橋“。
人間や巨人の住む大地から
アース神族の住むアースガルズへと
大きく架かるビフレストは、
その材料を水、火、大気からなり、
ゆらめきながら色を変え、三色に輝きます。
地上の人々の目にはそれが美しく映り、
やがては“虹”と呼ばれるようになりました。
雷神トールの川渡り
虹の橋の上、法廷に向かう神々は
毎日馬に乗って往復します。
神々の馬は名馬ぞろい。
一に俊足の8本足、
オーディンのスレイプニル。
二にグラズ、三にギュリル。
グレン、スケイズブリミル、シルヴリントップ、
シニル、ギルス、ファルボーヴニル、
グルトップ、レートフェティ・・・
ところが、橋は真っ赤な炎に包まれて
いつでも燃えているのです。
燃え盛る炎の熱は
橋のふもとに流れる聖なる川を
熱く煮えたぎらせます。
しかし橋を渡ることを許された神々は
熱さも知らず悠々と橋を渡ります。
そんな中、唯一、
怪力の雷神トールだけは橋を使わず
沸き立つ川をいくつもかち渡り
歩いて法廷へと通っていました。
屈強な体があまりに重かったため。
体から発する稲光により
橋が崩壊する恐れがあったため。
理由は様々言われますが、
その真相は不明です。
偉大なる門番ヘイムダル
神々のみが渡れる虹の橋。
それは敵対する山の巨人や霜の巨人の
侵入を防ぐためでもありました。
巨人たちは人間と同じく
地上に住処を置く者たち。
橋を渡って攻め入られては大変です。
神々は、灼熱の業火だけでは心許ないと
虹の橋に番人をつけることにしました。
偉大なる「白いアース」、ヘイムダル。
彼は日夜休まず橋を守り
何者かが橋を侵害しようものなら
緊急を知らせる角笛、ギャラルホルンを
いつでも吹き鳴らす準備でおりました。
虹の橋ビフレストは
神々が精魂込めて作り上げた
ほかよりずっと強くて巧みな傑作。
しかし、運命の日
ラグナロクが到来すれば、
この傑作もあっけなく終わるのです。
南に位置する灼熱の世界
ムスペルヘイムの巨人の一族
ムスペルの子らがやってきて
馬で橋を蹴立てれば
いかな神々の橋であっても、崩落は免れない。
その日、ヘイムダルの角笛は
天高く鳴り響き、世界中を轟かせる。
今夜のお話はいかがでしたか?
おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。
併せて、えむちゃんの朗読ちゃんねるも
ぜひ訪れてみてくださいね!
今日も一日、お疲れさまでした。
それでは、良い夢を。