【星座神話】蟹座。勇敢なる“キャンサー”の物語 / おやすみ前の神話シリーズ

春の夜空に瞬く、かに座。

小さな怪物は、ただ一心に抗った。

すべては日々を共に過ごした
無二の友人のためだけに。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、黄道十二星座の一つ、
勇敢なる蟹座“キャンサー“の物語をお話ししましょう。

スポンサーリンク

蟹座の歴史

スロベニアの50セント硬貨に刻まれた
美しい星座。

それがかに座

体の中央に儚げな星団を抱え、
夜空に静かに輝きます。

星団の名前は、
ラテン語で“飼い葉桶”を意味するプレセペ

英名では、“蜂の巣”と呼ばれています。

そして、星団に隣接する二つの星の名は、
アルセス・ボレアリスと、アルセス・アウストラリス

それぞれ“北のロバ”、“南のロバ”を意味し、
中央の星団の餌を食べているのです。

星座の起源は紀元前2000年頃に栄えた
古代バビロニアまで遡ります。

当時はまだ、かに座とはされず、
水に住む甲殻類や亀として
広く定義されていました。

古代エジプトにおいては
かにではなく「スカラベ」座とされ、

スカラベとは、和名でヒジリタマオシコガネ
すなわちフンコロガシのことを意味します。

スカラベの習性で作られる大きな球は
古代エジプト人たちが特別崇拝していた
太陽に見立てられ、

それゆえ、聖なる虫として崇拝されていました。

太陽神ケプリは、
スカラベの頭を持つ、日の出の神様。

エジプト神話の主神、太陽神ラー
日の出の時刻に地上へ姿を現す時、
この姿になるとされています。

さて、この星座をかにの姿としたのは、
古代ギリシアの神話がもとになっています。

哀しき運命を背負わされた、勇敢なる化け物、
かに座の物語。

蟹座の神話 化け蟹カルキノス

昔々、ギリシャのレルネーという沼には
恐ろしい怪物が棲んでいました。

九つの鎌首をもたげる
うみへび座の多頭竜、ヒュドラ

中央の首は不死の生命力を持ち、
吐く息には人が即死するほどの猛毒を含んでいました。

最高神ゼウスを唯一圧倒した
ギリシャ神話上最強の怪物テュポーンの子で

しかし一説には、
ゼウスの妻・女神ヘラによって育てられたと言われています。

これには複雑な事情があり、
夫・ゼウスが外で作ってきた
腹違いの息子ヘラクレスのことが恨めしいばかりに、

彼を亡きものにしようとする謀の一つだったのです。

そしてヒュドラが任務を無事遂行した時、
ヘラに伝令する役目を課された怪物。

それが今回の物語の主人公、化け蟹カルキノスです。

カルキノスは怪物といえど、
恐ろしげな能力は持ちません。

沼の底で、ただひっそりと、静かに佇みます。

ですが、あの誰もが恐れるヒュドラとは
仲の良い友人で、
二人は沼地で平和に暮らしていました。

ヘラクレスのヒュドラ退治

そんなある日のこと。

沼のほとりに、敵の影が見えました。

武装したヘラクレスたちが、
怪物退治に来たのです。

彼らがここに来るまでには、
壮絶な経緯がありました。

実はヘラクレスは、
女神ヘラの陰謀により狂気を吹き込まれ、

我を失ったまま、愛する我が子たちを
炎の中に投げ込み、殺してしまったのです。

正気を取り戻したヘラクレスは嘆き悲しみ、
己の罪を滅ぼすべく、神の御神託のもと
エウリュステウス王に仕え、苦行をこなしているのでした。

沼地のほとりに着いた一行は
猛毒を吸わないように布で口や鼻を覆い、
岩陰から矢を放って、ヒュドラに飛びかかりました。

その様子を、離れた場所から
固唾を飲んで見守るのは
友人を心配する化け蟹・カルキノスです。

カルキノスは、
ヒュドラの強さを知っていました。

彼ならきっと大丈夫だと、信じていました。

首を一つ二つと切り落とされてゆくヒュドラ。

しかし、傷口からは途端に二つの首が生え、
みるみるうちに当初の数を優に超えてしまいました。

驚くべき再生力に、
ヘラクレスたちは困惑します。

順調に戦うヒュドラを見て、
カルキノスは少し安心しながら、
それでもやっぱり片時も目を離さずに見つめていました。

スポンサーリンク

勇敢なるカルキノス

ところが、ついに風向きは変わります。

ヘラクレスの従者の一人、イオラオスが
切った首の傷口を間髪入れずに焼くことで
再生できなくなってしまったのです。

次々と首を失ってゆく
友人の姿を目の当たりにして、
カルキノスは我を忘れて飛び出してゆきました。

到底、太刀打ちできないことは分かっている。

それでも、走る足が止まりません。

女神ヘラに任された伝令役の務めも放り出して
真っ直ぐにヘラクレスのもとへゆき、

逞しい男の足を、小さな二つのはさみで力の限り掴みました。

結果はやはり、思った通りでした。

むずがゆさを感じたヘラクレスにあしらわれ、
カルキノスはいとも容易く踏み潰されてしまうのです。

その後、首が9つあったヒュドラは
最後の一つ、不死の首だけが残った無惨な姿と成り果て、

それをヘラクレスが切り落とすと
巨大な岩の下敷きにして、
ついに討伐がなされてしまいました。

友人のために命を賭した、勇敢なるカルキノス。

怪物たちの友情と悲惨な最期に
心を痛めた女神ヘラは、
二体を星座に変えて空に上げ、
すぐそばに寄り添うように置いてやったのでした。

空に輝くかに座の物語。

お楽しみいただけましたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

併せて、えむちゃんの朗読ちゃんねるも
ぜひ訪れてみてくださいね!

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

この記事をSNSでシェア!
スポンサーリンク

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

error: Content is protected !!