【星座神話】乙女座。豊穣の“ウィルゴ”の物語 / おやすみ前の神話シリーズ

春の夜空に瞬く、おとめ座。

喜びの春。悲しみの冬。

巡る季節は豊穣の女神の
震える心そのままに。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、黄道十二星座の一つ、
豊穣のおとめ座“ウィルゴ“の物語をお話ししましょう。

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乙女座の歴史

おとめ座は数ある星座の中で
二番目の広さを誇る、大きな星座。

乙女の手元に明るく光る星は
春の大曲線を繋ぐ一等星、スピカ

その名は「麦の穂先」を意味する
古代ギリシャ語に由来し、

それゆえ星座は
穀物の穂を握った姿で伝えられています。

おとめ座の発祥は、世界最古の文明を持つ
古代メソポタミアの時代に遡ります。

もともとは二人の女性が
それぞれ麦の穂と、
エルアの葉を持つ姿だったとされ、

のちにヨーロッパへと伝わる中で
一人の女性になっていったと言われています。

おとめ座のいう乙女とは、
どんな女性を指すのでしょう。

紀元前700年頃に活動した
古代ギリシャの詩人・ヘシオドスによると、

それは人間を監視する
正義の女神・ディケであるといいます。

同じく紀元前300年頃の
古代ギリシャに生きた詩人・アラトスによれば

ディケのほか、”星乙女”と呼ばれる
天秤座の女神・アストレアであるともされています。

いずれの女神にも共通するのは、
彼女たちは人間を見守り、
そして監視しているということ。

かつて平和な時代が終わりを迎えると、
人間たちは文明を生み出すとともに欲を出し、
醜い争いを始めました。

正義を説く呼びかけにも応じず、
女神は失望して、
人間たちとともに暮らした地上を離れ
天へと昇ってゆくのです。

ほかにも、エジプト神話の女神など
諸説言われるおとめ座。

もう一つ、主に語られる伝承に
ギリシャ神話の豊穣の女神・デメテルの名が挙げられます。

手に握る麦の穂。

それが彼女をおとめ座たらしめるもの。

神話に伝わる物語は、このようなものです。

おとめ座の神話 豊穣の女神デメテル

昔々、最高神ゼウスは
姉である豊穣の女神・デメテルとの間に
一人の子供を設けました。

のちに女神ペルセポネと呼ばれるその娘は
美しい乙女に成長し、
母・デメテルは彼女をとても可愛がっていました。

ペルセポネは清らかな女性でした。

知恵の女神アテナたちを敬い、
自身も生涯の純潔を誓いますが、

反して恋愛の神々を避けたことで
愛の女神・アフロディテの反感を買ってしまいます。

アフロディテは報復として、
よからぬ企てを思いつくと

冥界の王・ハデスにエロスの矢を放ち、
ペルセポネに恋心を抱くように仕向けるのです。

射抜かれたハデスは恋に落ち、
彼女の父・ゼウスの元に赴き
きちんと結婚の許しを得ますが、

これを後から知った母・デメテルは
勝手に結婚を取り決めたゼウスに猛反発。

可愛い娘を、地下深くの冥界などにはやれないと
ペルセポネをシチリアに隠してやりました。

冥界の王ハデスと農耕の女神ペルセポネ

ある日のこと。

ペルセポネが精霊たちと一緒に
野原で花を摘んでいると、

ふと目の先に、大変美しい水仙の花が
咲いているのを見つけました。

誘われるように水仙のもとへ駆け寄り
精霊たちと離れたその瞬間。

大地が深く引き裂かれ、
中から黒い馬にまたがったハデスが現れたかと思うと、

いとも簡単に冥界へと攫われてしまうのです。

母・デメテルはエトナ火山から松明を取り、
娘の姿を10日間、必死に探して回りました。

そしてゼウスに抗議しますが、
二人の結婚は釣り合いが取れているとして
聞き入れてもらえません。

暗い冥界に連れていかれて、
あの子は怖い思いをしていないかしら・・・

豊穣の女神の嘆きは大地の実りを取り上げ、
そうしてそのまま、地上に身を隠してしまうのです。

このままでは地上は飢餓で溢れてしまう。

困ったゼウスはハデスの元に遣いを走らせました。

ペルセポネと冥界のザクロ

さて、冥界では、ハデスも困り果てていました。

もとより恋愛ごとに不慣れなハデス。

頭を悩ませあれこれ手を尽くしますが、
ペルセポネは一向に振り向いてくれません。

それでもハデスは乱暴なことはせずに
優しく丁重に扱っていました。

そこへゼウスの遣い・ヘルメスが現れ
娘を返してほしいとの言伝を聞くと、
ハデスは抵抗もなく受け入れます。

母との地上の暮らしが恋しいと
涙を流すペルセポネの姿を、
これ以上見たくなかったのです。

とはいえ、金輪際会えないのは寂しい。

地上に戻されることとなったペルセポネに、
ハデスはザクロの実を12粒渡して
お腹が空いたら食べるようにと勧めました。

ところが、これは冥界の食べ物。

一度口にしてしまえば、客人として
冥界に留まらなければならないという掟がありました。

しかし、ペルセポネはお腹がぺこぺこで、
地上へ向かう道中、うっかり4粒食べてしまうのです。

12粒のザクロが表すのは、1年の12ヶ月。

そのうち4粒、すなわち4ヶ月の間だけは、
ペルセポネは冥界で過ごさなければならなくなりました。

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季節の始まり

娘の不在の間、
母・デメテルの悲しみに大地は枯れ果て、
再び地上に戻る頃に、喜びと春がやってくる。

こうして季節は巡るようになったのです。

心のままに四季をもたらす豊穣の女神・デメテル。

その姿は大きな星座となって
春の空から、大地に恵みを与えます。

ところで、冬のあいだ冥界で過ごすペルセポネは
冥府の女王として堂々と玉座に座り、

夫となったハデスの色恋沙汰に
やきもちを焼くほどには
愛し合っていたと伝わります。

ハデスの不器用な愛情に、
ついつい絆されてしまったのでしょうか。

空に輝くおとめ座の物語。

お楽しみいただけましたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

併せて、えむちゃんの朗読ちゃんねるも
ぜひ訪れてみてくださいね!

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

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