【星座神話】天秤座。正義の“リブラ”の物語 / おやすみ前の神話シリーズ

夏の夜空に瞬く、てんびん座。

人を愛する星乙女の
手に携えし天秤は

人みな等しく見極めて
善悪の程を量り示す。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、黄道十二星座の一つ、
正義の天秤座“リブラ“の物語
をお話ししましょう。

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天秤座の歴史

私たちの頭上を太陽が通る道、黄道

その一周に並ぶ13の星座のうち、
へびつかい座を除く12の星座が
私たちに親しい誕生日の星座、黄道十二星座です。

生き物の姿を表すものが多いことから
獣の帯と書いて“獣帯”とも呼ばれ、

これらは遥か古代、紀元前3000年頃に
文明を築いたメソポタミアの地、

シュメールの時代には存在した、
歴史ある星座です。

その中に一つだけ、異例の星座があります。

それがてんびん座

のちの時代に新たに加えられた、
12星座唯一の星座であり、

その過程には姿を変え、独立し、

獣の集まる黄道上でただ一つの、
道具を表す星座となりました。

てんびん座を構成する星々の中でも
代表的な3つの三等星は

それぞれの名を、アラビア語で

ズベン・エル・ゲヌビ、
ズベン・エス・カマリ、
ズベン・エル・ハクラビといいます。

その言葉の意味するは、
「南の爪」、「北の爪」、そして「サソリの爪」。

もうお分かりでしょう。

てんびん座は元々、さそり座の一部だったのです。

後にメソポタミアの星座が各地に広まり、
一説には紀元前1世紀ごろの古代ローマで
てんびん座として独立したと考えられています。

たとえば、1世紀に生きた古代ローマの詩人
マルクス・マニリウスは

季節のバランスを保ち、昼と夜を均衡する星座

として、てんびん座を言い表しました。

しかし、後の2世紀の古代ローマの天文学者
クラウディオス・プトレマイオスが作成した

現代天文学の礎「トレミーの48星座」には、
依然、“サソリの爪”として記録がなされています。

この48星座は、
紀元前2世紀の古代ギリシャの天文学者
ヒッパルコスの定義した46星座をもとに書かれたと言われており、

伝統的な古い星座を起用しただけ
とも考えられますが、

このように、
一体誰がいつ“てんびん座”と名付けたのか
明確には分かっていないのです。

唯一無二の、不思議で特別な星座。

そんなてんびん座の、
ギリシャ神話に伝わる物語は
このようなものです。

天秤座の神話 黄金の時代

これは、ギリシャ神話の最高神ゼウスが
世界を統べる前のお話。

かつてゼウスの父クロノスは、
原初の王に次いで全宇宙を支配した
神々の王の座にありました。

彼が統治した古の時代、
世界は幸福に満ち溢れ、神々は人間たちと共に
地上で平和に暮らしていました。

永遠の春がもたらす暖かな気候。

働かずとも、自然と実る豊富な食物。

飢える苦しみも、争いもありません。

当時の人間は寿命はあっても老いることはなく、

長い時を生きて、
いつか安らかに息を引き取るその日まで
若く健やかでいることができました。

豊かで、穏やかで、何一つ不自由のない世界。

そんな夢のような時代を、
のちにギリシャの人々は“黄金時代”と呼びました。

正義の女神・アストレア

さて、あまりに世界が満ち足りているので、
当時の人間たちはわざわざ汗を流してまで
文明を築き上げる必要がありませんでした。

それゆえまだ未熟であった人々に、
正義の教えを説いた神がいました。

心優しき正義の女神・アストレア

彼女の愛ある言葉に、人々は聞き惚れ、
女神を心から敬いました。

永遠に続くと思われた平和な時代。
しかし、それは突然に終わりを迎えます。

クロノスの息子の一人、ゼウスが
神々の王座を巡り戦争を起こしたのです。

銀の時代

かつてクロノスが
父ウラノスから王座を奪い取った時、
父からある予言を受けました。

「お前もまた、
いつかその王位を息子に剥奪されるだろう」

この言葉は呪いのようにクロノスを蝕み、

いつか生まれた息子たちを
脅かされるより先にと、
次々に飲み込んでしまいます。

クロノスの妻レアの機転で唯一難を逃れた
末弟・ゼウス。

ゼウスは、成人にまで成長すると
父クロノスに薬を飲ませて
腹の中にいた兄たちと共に大きな戦争を起こすのです。

ゼウスの最強の武器・雷霆を前に
クロノスの軍勢は敗北し、
全宇宙の支配権はゼウスへと移行しました。

これでようやく
世界が平穏を取り戻すかと思いきや、
実はこれが人間の苦難の幕開けでした。

迎えたのは“銀の時代”。

最高神となったゼウスは
1年を4つの季節に区切りました。

おとめ座の女神デメテル
娘と離れる悲しみにより寒い冬がもたらされると、

地上の恵みは痩せ細り、凍える人々は
食べるため、生きるために労働を始めます。

青銅の時代

次に迎えた”青銅の時代“。

人々の心に欲が現れ、
次第に悪行に手を染めるようになりました。

森林を破壊し、作った船で生き物を捕らえ、
奪い合った土地を荒らして金銀銅を漁っては
青銅を武器に変えて争う日々。

家族に手を掛ける者まで現れると、
黄金時代、共に楽しく暮らした神々は
すっかり人間に愛想を尽かして
次々天界へと帰ってしまいます。

そんな中、人々に向かってただ一人、
必死に訴えかける者がいました。

正義の女神、アストレアです。

「このまま堕落してはいけない。
あなた方の善なる心を思い出してください。」

しかし、その声はもう
人間たちの耳には届きません。

英雄の時代

見かねた天界の神々は
英雄を作り出し地上に送り込みました。

英雄の時代”です。

それでも、人間の堕落は止まることなく
事態は悪くなる一方でした。

一説にはこの直前、ゼウスが地上を一掃する
大洪水を起こしたとも言われますが、
事態は改善することなく最後の時代を迎えます。

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鉄の時代

邪悪と残酷に染まりきった、“鉄の時代”。

繰り返される殺戮。

憎しみ、苦しみ、悲しみにまみれ、
救いはもうありません。

ただ一人、地上に残り
人々を見捨てずにいた女神アストレアも

もはや何も出来はしないと人間たちに絶望し、
失意の中、地上を後にするのです。

天に登った彼女は空に輝く星となり
その左手に携えた、人の善悪を量る天秤が
今日知られるてんびん座となりました。

大いなる愛と教えを人間に与えた女神・アストレア。

鉄の時代が続く現代、強欲な私たちは
それでも彼女が今もなお
地上の様子を見守ってくれていることを願ってしまうのです。

空に輝くてんびん座の物語。

お楽しみいただけましたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

併せて、えむちゃんの朗読ちゃんねるも
ぜひ訪れてみてくださいね!

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

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