【星座神話】射手座。聡明なる“サジタリウス”の物語 / おやすみ前の神話シリーズ

夏の夜空に瞬く、いて座。

学術、芸術、戦闘術。

万能なる半獣は
他を導き、誉れを得る。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、黄道十二星座の一つ、
聡明なる射手座”サジタリウス”の物語
をお話ししましょう。

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射手座の歴史

天の川にかかる、六つの明るい星の並び。

南斗六星”、そこにいて座はあります。

大きく弓を引いた、半身馬の男の姿。

中でも上半身と弓の部分に位置する南斗六星は
西洋においてはスプーンに見立てられ、
通称ミルクディッパーと呼ばれています。

そして、隣接する腕から弓にかけての星は
ティーポットに見立てられ
注ぎ口のその先に、ミルキーウェイが流れているのです。

いて座の起源は古く、世界最古の文明を持つ
古代メソポタミアの地で誕生しました。

当初のいて座は、メソポタミア神話に登場する
パピルサグという神の姿でした。

その容姿は当時不明確でしたが、

のちに狩猟や戦争の神にして神々の英雄
ニヌルタと同一視されるようになり、

手には弓を構え、
馬の半身にサソリの尻尾を持った姿など
あらゆる形で描かれました。

ギリシャ神話のケンタウロス
ここからきているとされます。

ギリシャ神話におけるいて座のモデルは
ケンタウロス族のケイロンであるとされますが、
実は異論も唱えられています。

たとえば、偽エラトステネスの著作
『カタステリスモイ』によると、

ケンタウロス族は弓矢を使わないことから、

その正体は馬の尾と足を持つ
半人半獣の自然の精霊、サテュロス
中でもクロトゥスという名の男であるとしています。

クロトゥスは弓の発明者で、狩猟を得意とし、
芸術の女神ミューズ(ムサ)たちとともに
仲良く暮らしていました。

彼女たちの歌に合わせて
クロトゥスが賞賛の手拍子をすると

ミューズたちは大いに喜んで、
この勤勉なるクロトゥスに素晴らしい名誉を与えたいと
父・ゼウスに頼み込み、

弓を構えた勇ましい姿を星座にして
彼を称えたといいます。

それでは、現在主に言われるいて座のモデル、
ケンタウロスのケイロンとは
どのような人物なのでしょう。

射手座の神話 賢者ケイロンの誕生

昔々、黒海沿岸の島に
ピリュラという名の女神が住んでいました。

ある時、古の巨神族・ティタン神族の長である
農耕の神・クロノスが、妻レアの目を盗んで馬に化け
ピリュラとの間に子を設けました。

ケイロンと名付けられたその男の子の誕生は、
まさしく悲劇でした。

半身馬の野蛮なケンタウロスの姿で生まれたことで
母ピリュラは嘆き悲しみ、
天空神ゼウスに願って、自ら菩提樹になってしまうのです。

しかし、ケイロンは他のケンタウロスたちとは異なり
神々の教育のもと、実に賢く育ちました。

医学に哲学、占星術。

音楽、狩り、戦闘術。

一通りを極めると、
やがては多くの英雄たちに慕われる
心優しい賢者となりました。

剛腕の英雄・ヘラクレス

馬術の名手である双子座の兄・カストル
武術を教えたのも、

死者すら蘇らせる医学の神・アスクレピオス
医術を教えたのもケイロンです。

さらにはケンタウロスたちにも認められ、
異質の身でありながら、一族の長にもなりました。

ギリシャの北部、ケンタウロスの故郷である
ペリオン山の洞窟に住み、

幼い人の子の身を引き受けては学びを授けて育て上げ、

病に苦しむ人々を、薬を作って治療しながら
勤勉に暮らす日々。

そんなある日のことです。

ケイロンの住む洞窟が、突然騒がしくなりました。

武装したケンタウロスたちが
ばたばたと中に逃げ込んできたのです。

ヘラクレスとポロスの宴

時は遡り、宴の場。

ポロスという名のケンタウロスが、
英雄ヘラクレスと共に肉を食べていました。

ポロスはケイロンと同様、
その出身が異質であることから
野蛮な性格をしていませんでした。

怪物・エリュマントスの猪が人々を襲うので
ヘラクレスは生捕りを命じられ、

山へと向かう際に偶然ポロスに出会い、

光栄に思ったポロスは
心から歓迎して、宴に誘ったのです。

ポロスは生肉を食べ、しかしヘラクレスには
ちゃんと焼いた肉を勧めてやりました。

二人で楽しく食べるうち、
酒もほしくなったヘラクレスは

ポロスにねだって、ケンタウロス一族が
ぶどう酒の神・ディオニュソスに授かったという
大切な酒を開けてしまいます。

漂う香りに、
ほかのケンタウロスたちはすぐさま気づくと

我々の特別な酒を勝手に開けたと怒り狂って、
岩や丸太で武装して、ヘラクレスに襲い掛かりました。

突然のことに、ヘラクレスもまた怒りながら
燃え木を投げつけ応戦し、
さらには怪物ヒュドラの毒を塗った弓矢で反撃し始めました。

かすっただけでも死に至る、大変な猛毒です。

ケンタウルスたちは次第に追い込まれ、
一族の長である賢者・ケイロンのもとへ
逃げていきました。

大惨事

洞窟の奥、
ケイロンの後ろに隠れて震えるケンタウルスたちに
あとから追いついたヘラクレスは容赦無く毒矢を放ちます。

矢は一人に命中し、その腕を貫いて、
そしてすぐ側にいたケイロンの膝に刺さりました。

猛毒にもがき苦しむケイロン。

瞬間、誰に当てたか気づいたヘラクレスは、
さっと青ざめます。

かつて武術を教えてくれた大恩師を、
図らずも射抜いてしまったのです。

ケイロンから貰っていた薬を、
ヘラクレスは急いで塗りました。

しかし、ヒュドラの永遠の毒には効きません。

さらにはケイロンは、神の血を引いているため
不老不死でした。

あまりの苦しみに、ケイロンは自ら死を願い
不死の力を手放して息を引き取るのでした。

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ポロスとケイロン

一方、ポロスはというと、

一本の矢がなぜこうも威力があるのかと驚いて
矢を引き抜いたところ、
誤って足に落として死んでしまいます。

ヘラクレスはポロスを弔い、
最高神ゼウスは彼をケンタウルス座としてやりました。

そして、賢者ケイロンの死を嘆き、
いて座として空に掲げてやりました。

大きく引いた弓矢の先には赤い星、
「サソリの心臓」アンタレス

かつてその毒針で巨人オリオンを殺めたさそり座が
すぐそばにいるヘラクレスを攻撃しないか監視して、
ケイロンは常に狙いを定めています。

自らの命を奪ったかつての弟子を咎めもせず
迷いなく守ろうとする、大いなる師の姿が
そこにはあるのです。

空に輝くいて座の物語。

お楽しみいただけましたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

併せて、えむちゃんの朗読ちゃんねるも
ぜひ訪れてみてくださいね!

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