【星座神話】山羊座。神秘なる“カプリコーン”の物語 / おやすみ前の神話シリーズ

秋の夜空に瞬く、やぎ座。

跳ねあがる足は山を駆け
深く海の底を泳ぐ。

穏やかなる牧神とは
神々の喜び、それそのもの。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、黄道十二星座の一つ、
神秘のやぎ座“カプリコーン“の物語
をお話ししましょう。

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山羊座の歴史

ささやかに光る星々を繋ぎ、
逆三角の形を描く、やぎ座

英名を”Capricorn”といい、

これは太陽が空を運行する黄道上
もっとも南に位置する場所、
冬至点の名称に採用されていますが、
実際の冬至点は現在、いて座にあります。
(南回帰線:the Tropic of Capricorn

これは、時代と共に季節と星空がずれたためです。

星座が誕生した遥か古代のメソポタミア、
ちょうどバビロニアの時代には
冬至点は実際にやぎ座の位置にありました。

このことからも分かるように、
やぎ座は世界最古の文明とともに生まれた
歴史ある星座なのです。

原初の古いやぎ座は、
上半身が山羊、下半身が鯉の姿をした
メソポタミア神話における世界の創造神エンキを描いた星座とされました。

時が経ち、古代ギリシャに星座が伝わると、
今度はギリシャ神話になぞらえ
パンという名の神として見られるようになります。

羊の群れと羊飼いを監視する牧神・パンのその姿は、
人の体に山羊の足、頭にツノを生やした半人半獣。

「牧夫」を意味するパオンという言葉に
名前の由来があるとされますが、

一方では、「すべて」を意味する
“パン”という単語と似ていることから

時にその性格を誤って解釈されることもありました。

たとえば古代ギリシャの密儀宗教
オルペウス教においては、“両性の神”として。

また当時の一部の学者の間では、
“宇宙全体の神”として信仰されました。

とはいえ、この「すべて」という性質は
牧神パンの特徴にも大きく影響することとなります。

作者不明の古代ギリシャの讃歌『パーン讃歌』によると、

パンは山羊の足にツノを携えた奇妙な姿で生まれたために、
母親に捨てられてしまいます。

置き去りの子を見つけた神・ヘルメス
パンを拾って野うさぎの皮にくるみ、
神々の元へと連れ帰りました。

すると神々は、パンを大いに歓迎し、
中でもぶどう酒の神・ディオニュソスは特別に喜んだと言います。

このように、「すべての」神々を喜ばせることから
全てを表す”パン”という名で呼ばれるようになった、

あるいは、“パン”という言葉そのものの語源となった
と言われています。

さて、やぎ座に伝わる物語は、主に二つ。

一般的に語られるのは、エジプトのナイル川付近で
神々が宴を開いていたところに怪物・テュポーンが襲来し、

パンは体の上半身を山羊に、下半身を魚に変えて
川に逃げ込んだというもの。

しかしもう一つ、やぎ座には語るに欠かせない
栄光の物語があるのです。

山羊座の神話 ゼウスとアイギパーン

昔々、宇宙を統べる神々の王・クロノス
その王位を父親から奪った際、ある予言を受けました。

将来、お前もまたその地位を
これから生まれる子供たちに奪われることになるだろう–––

やっと勝ち得た王の座。

妻・レアのお腹には、すでに新たな命が宿っています。

予言を恐れたクロノスは、のちに生まれてきた
子供たちを次々と飲み込んでしまいました。

夫の狂気の行動に、当然、レアは怒ります。

残る末の子を出産すると
産着に石をくるんで赤子と偽り、クロノスに飲ませ、

そうして、夫に見つからぬよう
密かに育てることを決めるのです。

地中海に浮かぶクレタ島、神聖なるディクテオン洞窟の中。

暗い場所に隠されたその子供こそ、
のちに宇宙を統べる天空神・ゼウスです。

幼いゼウスは、アイギパーンという名の
ツノを生やした半人半獣とともに、
同じ山羊から乳をもらって育ちました。

アイギパーン、古代ギリシャ語で「山羊のパン」。

すなわち、彼が牧神・パンです。

ティタン神族との戦い

やがて成長したゼウスは、
父・クロノスに飲み込まれた兄弟たちを吐き出させて救出し、

ともに復讐を果たすための大戦争に臨みました。

対するクロノスは、
古の巨大なティタン神族を率いて進軍します。

その時です。

戦場に鳴り響く怪しげな轟音。

突然、ティタンの神々たちは取り乱し
何かに恐れながら逃げ惑ったのです。

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アイギパーンの貝殻の笛

彼らの聴いたその音は、
アイギパーンの吹き鳴らすホラ貝の笛の音。

戦いに際し、アイギパーンは自身の下半身を魚に変えて、
海底から不思議な音を鳴らす貝殻を見つけていたのです。

こうして魚の尾を備えたパンは、
広い世界のどこへでも行ける素晴らしい足を得ました。

魚の尾はパンを深い海底へと導き、
山羊の足は高い山の頂きにまで登ることができました。

戦いの最終局面、ゼウスが最強の武器・雷霆を振るうと
敵は一網打尽、ついに勝利を収めます。

ゼウスはアイギパーンの大いなる功績を讃え、
やぎ座として空に掲げたのでした。

空に輝くやぎ座の物語。お楽しみいただけましたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

併せて、えむちゃんの朗読ちゃんねるも
ぜひ訪れてみてくださいね!

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

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