【北欧神話8】邪悪な神ロキと世界を滅ぼす三人の子どもたちの物語
巨狼フェンリルの枷は外れ
大蛇ヨルムンガンドは波を打ち付ける
死者の爪から作られた船が浮かび上がり
やがて巨人たちが押し寄せる。
『巫女の予言』
邪悪で狡猾、気まぐれで悪戯好き。
悪神・ロキは
時に神々を助け
時に神々を困らせる・・・
その子供こそ恐ろしき
世界を滅ぼす三人の怪物。
こんばんは。えむちゃんです。
今宵は、悪神ロキとその三人の子供たちの物語をお話ししましょう。
悪神ロキの性格
父は巨人ファールバウティ。
母はラウフェイ。
二人の間に生まれたロキは、
神でありながら、神々の天敵である
巨人の血を引いていました。
彼の性格は、邪で極めて気まぐれ。
陰謀や悪戯が大好きで、
周りを欺いては楽しんでいました。
けれども一方で、
ロキは神々に親しまれてもいました。
最高神オーディンの義兄弟となって
神々の世界に住みついたり、
雷神トールの良き友人として
世界各地への旅に同行したり、
神々に生じた問題を
何度も解決へ導いたり。
そんな矛盾の塊のような不思議な神でした。
ロキの結婚
ある時、ロキは神々に内緒で
巨人の世界ヨーツンヘイムを訪れました。
そこで女巨人アングルボザに出会います。
彼女は恐ろしい姿をしていましたが、
惹かれ合った二人は結婚し、
やがて三人の子供が産まれました。
ロキの三人の子供たち
長男、フェンリルは
狼の姿をした怪物。
次男、ヨルムンガンドは
大蛇の姿をした怪物。
二人の妹、ヘルは
半身が青色に腐敗した死の女神。
ロキは、生まれた子供たちの
おぞましい姿を見て、驚きました。
神々に見つかっては大変と、
三人を洞穴へと隠します。
しかし、三人の怪物は
すさまじい速さで成長し、
洞穴に収まり切らなくなりました。
とうとう外へ出てしまった三人の様子を
最高神オーディンは見ていました。
この時、彼は
運命の女神ノルンに聞いた
ある予言を思い出していました。
『ロキの邪悪な子供たちが、神々の敵になる』
予言に言われる相手こそ、
あの三人の怪物のことだったのです。
ノルンの予言を思い出したオーディンは、
どうにかせねばと思い立ち、
巨人の世界ヨーツンヘイムへと訪れました。
三人の子供のその後
「どうにか手を打たなくてはならない。」
オーディンは、まずヘルを掴むと
氷の世界ニヴルヘイムの底へと投げ落としました。
そしてヘルに向かって、こう言います。
「お前は世界のどん底に住み、
冥界の女王となるがいい」
そうしてヘルは、
病や老衰で死んだ人々や
悪人の魂を支配する
死者の国の女神となりました。
次に、オーディンは
ヨルムンガンドを掴んで、
海の中へと放り投げました。
「お前は海の底に住み、
おとなしくしているがいい」
ヨルムンガンドは、
海の中でも成長し続け、
ついには人の世界ミドガルドを
ぐるりと囲えるほど大きな世界蛇となりました。
そして、最後に残ったフェンリルだけを
オーディンは神々の世界へと
連れて帰りました。
なぜなら、その時のフェンリルは
ごく普通の狼の姿をしていたため、
優しく育ててやれば問題ない
と考えたからです。
ところがフェンリルは、
日に日に大きくなり、
やがて神々の手に負えないほど
凶暴な巨狼となったため
のちに拘束されてしまうのでした。
フェンリルを捕らえるために
四苦八苦奮闘する神々のお話は、
また次のお話で。
三人の怪物たちは、
いつか来る神々との戦いの日まで
静かに牙を研ぎ、
深淵から神の世界を覗くのでした。
今夜のお話はいかがでしたか?
おやすみ前の神話シリーズでは、世界中の神話をお話しします。
今日も一日、お疲れさまでした。
それでは、良い夢を。