南極大陸の氷の下に広がる!未知の世界の謎!
1967年のある日。
マイナス30度の南極大陸を調査する
二人の若い地質学者は、
白い砂岩の集まる中に埋もれた
小さな黒い石を発見する。
―――なんだろう。不思議な形だ。
穴がたくさん空いている。
目には留まったが、そこまでのものではない。
ただの石だろうと言いながら、
その場を後にしテントへ戻った・・・
調査の成果は未だ僅か。
残された時間は少ないが、
何か大きな収穫はないか?
そんな中、二人は
昨日の黒い石のことを思い出す。
そうして何気なく採掘したその石を
大した期待もせず持ち帰ったのだった。
彼らはこの時、まだ知らなかった。
それは、極寒の南極大陸には
存在しえないと思われていたもの。
遥か古代の2億年前、三畳紀に栄えた
脊椎動物の化石だったのである。
こんにちは。えむちゃんです。
今回は、南極大陸の氷の下に広がる
未知の世界の謎をご紹介します。
南極に存在しえぬ動物の化石
南極の地で発見された黒い石の正体は
鑑定の結果、両生類の骨と判明します。
広く分類して
“ラビリントドン”と称されたその生物は
ワニやイモリのような姿をし、淡水に住んでいました。
極寒の地には存在し得ない。
そんな生き物がなぜ、南極で見つかったのか?
調査隊が何気なく持ち帰ったその化石は、
南極大陸の重大な謎を紐解く
世紀の大発見だったのです。
氷の世界・南極大陸
深く氷に閉ざされた、南極大陸。
内陸の年平均気温はマイナス57度、
最低気温はマイナス89.2度を記録する、過酷な環境。
大陸の面積は世界で五番目に大きく、
オーストラリア大陸の約2倍、
日本の約37倍にもなります。
1820年に発見されて以来、
世界中の研究者が調査を進めてきましたが、
分厚い氷にはばまれ、依然多くの謎を秘めています。
なにせ、南極大陸の実に98%は
氷が覆っているのです。
南極大陸の氷
氷の厚みは、季節や場所によって異なりますが
平均およそ2000mにも達し、
最も分厚いところでは
4000mを超えるものもあります。
南極大陸の氷を全て合わせると、
面積は約1400万平方キロメートル、
体積は約3000万立方キロメートル。
地球上に存在する氷の約90%が
南極大陸に集中していると言われ、
もしそれが全て溶けた場合、
地球の海水面が60m上昇すると考えられています。
膨大な氷のその下に広がるのは、
未知なる大地。
一体、どのような世界なのでしょう?
ここで、あの時発見された化石が
大きなヒントを与えてくれるのです。
南極大陸の氷の歴史
南極大陸に氷が張られるようになったのは
今から3300万年ほど前だと考えられています。
私たち人類の祖先、
ホモ・サピエンスが誕生したのが
およそ20万年前のことですから、
それよりも遥か昔から南極の氷は存在していたことになります。
化石が導き出す一つの仮説。
それは、大陸の分断です。
かつて存在した大陸から
長い時間をかけて分裂し、
孤立した南極大陸は徐々に南下。
海に囲まれ、
さらに激しく冷え込んだことで
大量の雪が降り積もり、
次第に圧縮されることで氷が形成されます。
そして、何百、何千万年という時が経つ中で
氷は次第に増えてゆき、やがて氷床ができて、
現在の姿になったのです。
この化石の発見は、1912年、
ウェゲナーによって提唱された大陸移動説を
裏付ける証拠となり得るとして、
世界中の研究者たちを驚かせました。
それでは、大陸の形成と
生態系繁栄の歴史について
さらに時代を遡り探ってゆきましょう。
氷が張る前の世界
南極大陸に氷が張るよりも遥か昔の
約5億5000万年前。
地球の南半球には、ゴンドワナ大陸と呼ばれる
巨大な大陸が分裂により誕生しました。
ゴンドワナ大陸は、
現在のアフリカ大陸や、南極大陸、
オーストラリア大陸、インド亜大陸などから構成される超大陸。
暖かく、豊かな植物の生い茂る場所でした。
2億9000万年前ごろになると、
ユーラシア大陸や北アメリカ大陸が融合した
ユーラメリカ大陸と衝突し合体。
さらにほとんどの大陸が集合した
“パンゲア大陸”と呼ばれる超大陸と衝突して、
一つの超巨大な大陸となっていったと考えられています。
パンゲア大陸には
巨大な両生類や爬虫類が生息し、
恐竜の祖先や、哺乳類の祖先も誕生しました。
後に南極大陸となる地域には
一時期、大規模な氷床が発達するものの、
大陸の移動によって気温は上昇し
氷は溶けてなくなります。
23度前後の気温下で
多種多様な植物や動物、昆虫たちが繁栄し、
当初の南極は
私たちの知る現在の姿とはまるで異なる
生き物たちの楽園でした。
1億8000万年前ごろになると、
パンゲア大陸は再び二つに分裂。
今日の南極大陸に位置する場所には
恐竜たちが栄えます。
大陸の分裂はその後も続き、
6500万年前から4000万年前にかけて
南極大陸は孤立。
そして、3300万年前に氷が形成され始め、
1500万年前に完全に氷で覆われるまで
南極大陸には緑が溢れていたのです。
氷の下に広がる世界
たった一つの骨の化石から始まった
南極大陸の物語。
凍てつく氷の下に広がる、豊かな世界。
南極大陸を覆う数千mもの分厚い氷の先には、
巨大な谷や山脈、平原などが、今も眠っています。
それらは過去数千万年にわたり
外界から完全に隔離され、
古代の姿をそのままに、現代まで残しています。
1996年、とある発見が世界中に衝撃を与えました。
深い深い氷の下、4000メートル先に
水の状態を保ったまま凍らずにいる
超巨大な湖が見つかったのです。
調査が進むごとに新たな可能性が発覚する
氷底湖のその名は、ボストーク湖。
人類未踏の空間、南極大陸の氷の下に眠る氷底湖の謎については、
こちらの記事で詳しくご紹介していますので、
気になる方はぜひチェックしてみてくださいね!