最新研究で明らかに!?暗黒物質ダークマターの正体!(後編)
宇宙が誕生した時、その骨組みとして宇宙を現在の構造にまで作り上げた“ダークマター”。
質量がありながら、目に見えず、触れることすら叶わない。
そんな未知の物質。
ダークマターの発見から、およそ80年が経った今。
私たち人類は、その正体の解明に日々近づきつつあります。
こんにちは。えむちゃんです。
今回は、暗黒物質ダークマターの真実に迫る最新の研究結果についてご紹介します。
ダークマター発見の歴史や、極めて異質な特性などについては、前編・中編の記事でご紹介していますので、ぜひ先にチェックしてみてくださいね!
<関連記事>
『宇宙の最大の謎!暗黒物質ダークマターの正体!(前編)』
『異次元過ぎる4つの性質!暗黒物質ダークマターの正体!(中編)』
ダークマターの正体の解明
スイスの天文学者フリッツ・ツビッキー氏や、アメリカの天文学者ヴェラ・ルービン氏によってダークマターの存在が示唆されて以降、世界中の研究者は、ダークマターの全てを解明しようと研究に励んできました。
さて、最新の研究内容のご紹介の前に、ダークマターが発見されてから現在に至るまでの研究の流れを、一度振り返ってみましょう。
まずは、天体望遠鏡を使って、机上の理論と実際の銀河の観測とを比較し、ダークマターの不思議な“性質”の数々を明らかにしました。
次に「ダークマターは質量を持つ」という性質をヒントに、重力レンズ現象、すなわち、光が質量を持つ物質の引力によって曲げられる現象を利用することで、宇宙に散らばるダークマターの“居場所”をつきとめました。
さらに、ダークマターの分布と宇宙の構造を照らし合わせることで、遥か昔、宇宙の誕生において、ダークマターは骨組みという“役割”を担っていたことが判明しました。
そしていよいよ、ダークマターの“正体”を導き出すため、研究者たちはあらゆる物質の中から、その候補を洗い出しました。
ダークマターの候補
ダークマターの正体として挙げられる候補は、主に二つ。
大きく、MACHO(マッチョ)とWIMP(ウィンプ)に分類されます。
<MACHO(Massive Compact Halo Object)>
MACHOとは、銀河を包む領域ハローに存在する、ある程度の大きさと質量を持ちながら、光をほとんど発しない天体のことです。
太陽のように自ら光を発するような恒星にまでなれなかった天体や、あるいは恒星が寿命を迎え、光を失った天体のことを、総じてMACHOと呼びます。
MACHOの候補としては、中性子星や古い白色矮星、小さなブラックホールなどが挙げられます。
MACHOは、非常に暗いため目には見えず、さらに重力を確かに持っていることから、特徴の類似するダークマターの正体ではないかと候補に挙げられたのです。
電磁波をほとんど発しないMACHOは、現代の技術でも直接の観測ができません。
しかしながら、ダークマターと同様、重力レンズ現象を利用することで、近年、少しずつその姿を捉えることができるようになりました。
ところが観測の結果、MACHOの総量は、銀河系とハローをあわせた総質量のたった20%にしかならないことが判明します。
銀河の質量のほとんどを占めると言われる、ダークマター。
MACHOがダークマターだとするには、量があまりに少ないのです。
<WIMP(Weakly Interacting Massive Particles)>
ダークマターのもう一つの候補として注目されたのは、WIMPと呼ばれる素粒子たちです。
素粒子とは、物質を構成する最小の単位、つまり、これ以上バラバラにすることができないという
一番小さな粒です。
WIMPはそうした素粒子の中でも、他の物質とほとんど反応せず、そして質量を持つ素粒子のことを指します。
WIMPの中でも、ダークマターの候補として有力とされる素粒子は、複数挙げられました。
・ニュートリノ(Neutrino)
まず候補に上がったのは“ニュートリノ”でした。
ニュートリノは、電気を持たない素粒子の一つです。
ニュートリノは電気を帯びていないため、他の物質とほとんど反応しません。
これはすなわち、ダークマターと同様、物体をすり抜けるという非常に稀な性質があるということです。
また、宇宙に広く多く存在するという点においても、ダークマターと共通しており、1980年代には有力な候補として挙げられていました。
しかし、2015年、ニュートリノに質量があることが証明されると、同時にその質量があまりにも軽いことが判明し、ダークマターの候補から外れてしまいます。
・ニュートラリーノ(Neutralino)
理論によってのみその存在が示唆されている、未発見の素粒子“ニュートラリーノ”。
「電気を持たず、他の物質とも稀にしか衝突しない」というニュートラリーノの性質は、ダークマターの持つ性質と類似しており、その候補として有力視されています。
・アクシオン(Axion)
ニュートラリーノと同様、電気を持たず、他の物質とも稀にしか衝突しない仮想上の素粒子“アクシオン”も、ダークマターの候補として非常に有力と言われています。
アクシオンはニュートラリーノに比べ、極めて質量が軽いと考えられていますが、存在する数が非常に多く、またダークマターと同様、宇宙誕生のビッグバンの瞬間に作り出されたとされています。
ダークマターを見つける3つの方法と最新研究
目に見えなくとも、確かに存在する宇宙の暗黒物質ダークマター。
私たち人類はいつか直接観測によって、その存在を確認できるようになるのでしょうか?
実は現在、ダークマターの姿を捉えるべく、大きく3つの方法によって測定実験が行われているのです。
それぞれ内容を見てみましょう。
加速器実験
加速器実験は、通常の物質同士を衝突させることでダークマターを作り出す方法です。
原子核同士を高エネルギーで衝突させると、たくさんの物質が生成されます。
その中からダークマターの候補となる未知の素粒子を探し出すという実験です。
LHC ATLAS(アトラス)実験
フランスとスイスの国境に跨る全長27kmのトンネル内に設置された、世界最大の加速器“LHC”では、2010年以降、光速に近い速度で陽子同士を衝突させる実験が開始されました。
現在のところはまだダークマターの直接生成は実現していませんが、2022年以降、加速器のアップグレードが行われ、未知なる素粒子の発見が期待されています。
間接探索
間接探索とは、銀河の中心など、ダークマターが密集している場所でダークマター同士が衝突し、対消滅する際に発生する信号を観測する方法です。
国際宇宙ステーションなどで観測が行われていますが、ダークマターの正体を示す確実な証拠は未だ見つかっていません。
直接探索
直接探索とは、ダークマターが通常の物質にぶつかる際の現象を観測する方法です。
ダークマターはほとんどの場合、他の物質をすり抜けてしまいますが、ごく稀に原子核と衝突することがあります。
この時、温度が上がったり、電気や光が生じたりすると考えられ、これらの変化を検出する方法です。
観測は、出来る限り他の物質が入り込まないよう、地下深くで行われています。
一度に数十億個ものダークマターの粒子が地球を通過すると言われていますが、そのうち、他の物質と衝突し反応するのは100万個に1個程度です。
その1個をピンポイントで観測する必要があるため、成功の確率は非常に低く、この実験も現在に至るまで、ダークマターの粒子を観測できていません。
しかし、新たな発見もあります。
XENON実験(キセノン)
現在、直接探索による観測は世界中で行われており、そのうちの一つにXENON実験というものがあります。
XENON実験とは、液体キセノンを詰めた検出器でダークマターを直接検出する実験です。
2016年〜2018年にかけ、イタリア・グランサッソ国立研究所内の地下研究所で、液体キセノンを用いた実験が行われました。
そして2020年6月に発表された実験の結果は、世界中の研究者たちを驚かせました。
なんと、これまでの理論では説明がつかない異例の反応が観測されたのです。
この原因は完全には解明されていませんが、未知の素粒子である可能性や、これまで知られていなかったニュートリノの性質による可能性などが考えられています。
今後、検出器はさらにアップグレードされ、ダークマターの正体となる未知の素粒子が発見される可能性は、引き続き高まってゆくのです。
現在においても、未だその正体が明らかになっていない“ダークマター”。
その正体を解明すれば、ノーベル賞の受賞は確実だと言われています。
人類が宇宙の真実と対面する日を夢見て、今日も世界中では研究が進められています。
技術の発展とともに、私たちは少しずつ、確実に謎の解明に近づいているのです。
ダークマターの正体が明らかになる日、これまで信じられていた物理法則は覆ることになるでしょう。
宇宙には、未だ解明されていない謎が数多く存在します。
近年になってようやく直接観測に成功した、“ブラックホール”もその一つ。
ブラックホールに落ちるとどうなるのか?
暗闇のその中心には何があるのか?
そして、人類が自らの手でブラックホールを作り出した時、世界はどうなってしまうのか?
謎に包まれた不思議な天体・ブラックホールの10の真実については、こちらの記事でご紹介していますので、気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。
→ 『驚愕!“ブラックホール”の10の真実!あなたが知らない宇宙の雑学!』