【北欧神話22】美しき色欲の女神フレイヤの物語

フォールクヴァングのその館に
女神フレイヤは
広間セスルームニルの座を決す

女神は日毎
戦死の者の半らを得
ほかはオーディンのもとへと帰す

『ギュルヴィたぶらかし』

その女神は魔術セイズをもたらした。

美と愛を象徴し、生と死を司る。

絶世の美しき女神フレイヤ
誰もが羨み、誰もが欲した。

気高く、気安く近寄らせず
しかし欲には忠実で

性に奔放でありながら
ただ一人の夫のために清らかな涙を流し

所変われば戦地に赴き
ワルキューレを率いて廻る。

そんな、様々な表情を併せ持つ
大胆で繊細で、魅力的な女性。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、美しき色欲の女神
フレイヤの物語
をお話ししましょう。

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美しき色欲の女神フレイヤ

かつて対立する神々の二つの種族
アース神族ヴァン神族
世界で初めて起こした戦争。

きっかけは、ヴァン神族の卑しい魔女
グルヴェイグを恐れたアースの神々が
彼女を殺そうとしたことでした。

両軍は長い戦いに疲れ果て、
人質を送り合って和解することにします。

ヴァン神族が差し出したのは
最も優れる海の神ニョルズ
美しい双子の子供ーーー
兄のフレイ、そして妹のフレイヤ

そう、彼女こそ今回のお話の主役
愛と色欲の女神です。

フレイヤはアース神族の国に渡り
北欧神話に伝わる魔術セイズを伝授しました。

その容姿は非常に美しく、
天界の神々のみならず
巨人族や小人族、人間までも魅了して
いつでも複数の愛人がいました。

フレイヤの聖獣は
子供を多く産む豚に、ツバメにホトトギス。

特に彼女が好んだ猪と猫も
同様に多産の象徴でした。

移動時にまたがる猪ヒルディスヴィーニ
その実、愛人の一人、人間のオッタルが変身した姿とも言われ、

彼女に付き従う2匹の猫
“蜂蜜“ベイグルと、”琥珀“トリエグルの引く車もまた、移動手段の一つでした。

奔放と純愛

オーズの名は、“激情“。

フレイヤは自由奔放でしたが
夫はオーズただ一人。

かつてオーズが長い旅に出た時には
フレイヤは取り乱し、
泣いて夫を探して回りました。

流した涙は大地を伝い
やがては黄金を宿したといいます。

オーズとの間に設けた二人の娘
フノスゲルセミ

その名はいずれも“宝石”を意味します。

美の女神フレイヤは
宝石や黄金、宝飾やお化粧など
美しいものが大好きでした。

首元にきらめくブリーシンガルの首飾り
神々すら息を呑むほど素晴らしい、
黄金の宝飾です。

フレイヤはこの首飾りを手に入れるため
家事職人の小人たちにその体を差し出しました。

彼女は自らの欲のためには
手段を選ばないのです。

戦死者の選定

フレイヤには同一視される、
ある人物がいます。

魔女グルヴェイグ

アース神族とヴァン神族による戦争の
きっかけとなった、あの卑しい魔女です。

→ 『【北欧神話7】魔女グルヴェイグが引き起こす!アース神族とヴァン神族の戦いの物語

これには様々な謂れがありますが、
たとえば、フレイヤの黄金の涙。

実は、魔女グルヴェイグのその名は
黄金の力」を意味します。

グルヴェイグは、セイズの魔術で
人の心をたぶらかして回り、
フレイヤは、セイズの巫女として
アースの神々に魔術を教えました。

この共通点は、はたして偶然でしょうか。

さて、魔術セイズといえば
深く関わりがある人物がもう一人います。

フレイヤの愛人に名を連ねる
最高神オーディンです。

二人の間には密接な関係があります。

フレイヤは、オーディンに
セイズの魔術を教え、

オーディンは、フレイヤに
戦死した英雄たちの魂を
半分分け与えることを認めています。

フレイヤは時に、戦地を駆ける乙女
ワルキューレの軍を率いて
自ら鎧に身を纏い戦場に立ちました。

→ 『【北欧神話21】戦場の乙女ワルキューレと死者の館ヴァルハラの物語

英雄の魂が集められる
オーディンの館ヴァルハラ
対をなしてそびえるフレイヤの宮殿
フォールクヴァングには、
英雄の家族や愛人たちの魂までもが
寛く迎えられ、

フレイヤは彼らが死後、
幸せに暮らせるように手厚くもてなしました。

これだけの特別な待遇に加えて
フレイヤはオーディンより先に、
特に勇敢な魂を選び取ることまで
許されているのですから、不思議なことです。

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フレイヤと偉大なる女神フリッグ

一体なぜ、フレイヤは一女神でありながら
最高神と対等に分け前を得ているのでしょう。

実は、フレイヤにはもう一人
同一視される人物がいるのです。

愛と結婚を司る、最も偉大なる女神。

最高神とともに
王の玉座に座ることを許された
オーディンの妻、フリッグです。

彼女もまた、
フレイヤのように魔術セイズに長け、
鷹の羽衣を持ち、黄金に目がありません。

しかし性格だけは相反して
フリッグは冷静沈着、物静かで聡明な女性でした。

それでも本当にフレイヤが
神々の王妃と同一人物であるならば
彼女への異例の特別待遇も頷けるでしょう。

気高き女王フリッグ。

数々残る逸話については、
また今度のお楽しみ。

今夜のお話はいかがでしたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

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