【北欧神話27】神々を狂わす宝飾!“ブリーシンガルの首飾り”の物語 / おやすみ前の神話シリーズ

私は知っている

ヘイムダルの角笛あるいは聴力が
聖なる世界樹ユグドラシルのもと
隠されていることを

私は見つめている

戦死者の父オーディンが差し出した担保より
豊かなる滝が溢れ出るさまを

『巫女の予言』

色欲の女神フレイヤの首元に輝く
世にも美しい、“ブリーシンガルの首飾り”。

それはかつて素晴らしい鍛治職人である
小人たちが作り出したもの。

いくら目の肥えたフレイヤでも
その宝飾を前にしては
我を忘れて心酔する。

さて、今回のお話は
そんな女神の首飾りをめぐる、一悶着のお話。

こんばんは。えむちゃんです。

今宵は、神々を狂わす宝飾
“ブリーシンガルの首飾り”の物語
をお話ししましょう。

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不審な足音

とある夜更け、
天に架かる虹の橋ビフレストのたもと。

神々の世界アースガルズの
門番をするヘイムダルは、今日も今日とて
寝ずの見張りを続けていました。

皆が寝静まった、穏やかな夜。

ですが、その日は少しいつもと違いました。

抜き足、差し足、忍び足。

猫のような足音は、
しかしヘイムダルの耳には確かに
どこか怪しく聞こえたのです。

草木の生える音、
羊の毛が伸びる音をも聞き分ける
特別な聴力を持つ彼がそう言うのですから、
きっと本当にそうなのでしょう。

音の先は遥か遠く、
色欲の女神フレイヤの住む館
フォールクヴァングの方角。

ヘイムダルは真っ暗な世界を
じっと睨みつけます。

すると彼女の館に、悪戯好きの悪神ロキ
こそこそと近づいているではありませんか。

百マイル先も軽々見通す彼が
そう言うのですから、
きっと本当にそうなのでしょう。

―――また何か悪巧みをするに決まっている。

ヘイムダルは、ロキの様子を伺いながら
急ぎフレイヤの元へと駆けつけました。

悪神ロキの窃盗

監視されているとも知らないで、
ロキはさっそく1匹の蝿に変身し
隙間から館の中へ、いとも容易く侵入します。

ベッドに眠る、美しいフレイヤ。

その横に佇むロキは
にやりと笑って、手を伸ばしました。

女神の首元に光る、ブリーシンガルの首飾り

そう、ロキの狙いはこの宝飾だったのです。

ところが首飾りは、フレイヤが
何より大事にしながら寝ていたために、
さっさと盗んでしまいたいのに
なかなか首から外せません。

仕方がないので、ロキは
今度はシラミになって
女神の体をちくりと刺しました。

そして寝返りを打った隙に
首飾りを器用に奪ってしまったのでした。

ヘイムダルとロキの戦い

こうしてフレイヤを起こすことなく
盗みを成功させたロキは、
急いで館を後にします。

この一部始終を影から見ていた
ヘイムダルは、怒り心頭。

腰に差した、岩をも砕く剣を抜き
ロキを追いかけ、切りかかりました。

驚きながらも、とっさに青い炎に変身し
攻撃をかわすロキ。

負けじと、ヘイムダルは雨雲になり
炎を消さんばかりの雨を降らします。

慌てたロキは、今度は熊になって
降りしきる雨を余さず飲み干そうとしました。

これを見てヘイムダルもすぐさま熊に変身し
ロキに襲いかかりました。

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ブリーシンガルの首飾り

暗い闇夜に煌々と光る月明かりのもと、
激しく格闘する2頭。

噛み付いて、爪で掻いて、
一体どれほど時間がたったのでしょう。

ついにはロキが劣勢になり、
このままでは負けてしまうと
最後にはアザラシに姿を変えて、
近くにあった水の中へ飛び込みました。

しかしヘイムダルは逃しません。

女神の首飾りを返してもらっていませんから、
自分もまたアザラシになって、
ロキの後を追いかけます。

水の中まで追ってこられては、
流石のロキももうお手上げ。

逃げる場所は何処にもありません。

とうとう観念したロキは
元の神の姿に戻り、

憎めぬ悪戯な笑顔で
首飾りをヘイムダルへと返したのでした。

今夜のお話はいかがでしたか?

おやすみ前の神話シリーズでは、
世界中の神話をお話しします。

併せて、えむちゃんの朗読ちゃんねるも
ぜひ訪れてみてくださいね!

今日も一日、お疲れさまでした。

それでは、良い夢を。

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